文集や発表の資料など、印刷する機械が多くなる学期末ももうすぐ。印刷物を作るときにあまり気を配ることのない「字体」(字の形)ですが、使う種類によって印象がとても変わることを知っていますか? 字体を上手に使い分け、読む人に思いが伝わる作品をつくるにはどこに注意すればよいでしょう? 90 年前から活字づくりを手がける「築地活字」(横浜市南区吉野町)を訪ね、「字の形」にまつわるお話を聞きました。
(宮島 真希子)
活字ってどんなもの?
活字とは金属製の四角柱に、字や記号の形を刻み、インクをつけてくり返し印刷できるようにしたもの。金属は「インゴット」と呼ばれ、鉛・スズ・アンチモンを混ぜたものでできています。
築地活字には、活字をつくる機械が 6 台あります。すべてが 40 年以上使われている。
活字をつくるには、まずインゴットを熱し、ドロドロに溶かします。この液体を「活字の型」をセットした機械に通して素早く冷やし、必要な字を打ち出します。「カッタン、カッタン」という規則的な音とともに、銀色の四角柱が次々と並んで出てきます。
パソコンやプリンターが家庭や会社にない時代、印刷には職人さんたちの地道な作業が必要でした。さまざまな字体から、印刷する内容にふさわしいものを選び、手書きの原稿通りに活字を一文字ずつ組み合わせる細かい仕事を積み重ね、印刷物を作り上げてきたのです。
内容に合う字を選ぼう
築地活字の経営者、平工希一さんによると、この会社には、約 26 万種類の字の型(母型)があるそうです。
「手書き風の味わいが残る宋朝体、親しみのある感じを出したいときには丸ゴシック体、一番よく使われるのは明朝体ですね」
先生や家族以外の大人などに向けた文章には明朝体、友達と作る印刷物には丸ゴシック体、本のタイトルなどおしゃれにデザインしたいときには宋朝体のような印象的な字体を使うとよいようです。
パソコンにもさまざまな字体が登録されているので試してみよう。築地活字では今後、小学校高学年以降の子供たち向けに見学会開催を検討していくそうです。一つ一つ、違う形の字が生まれるところを見ると、いろいろなデザインを考えつきそうですね。
※この記事は 2009年 2月16日 (月) 発行
神奈川新聞『キッズ・Weekly』から掲載しました。